コミュニケーションを大切に
チーム全体の成長を目指す
仕上班の班長は
4児の父
金子知史の1日は賑やかに始まる。4人の子供がいる家庭はいつも明るい。出社前の慌ただしい時間帯でも、家族との会話と朝食は欠かさない。リフレッシュして気分良く職場に向かうことで、集中力が高まるのだ。
出社するとまずは朝礼。金子が班長を務める仕上班は、機械班で加工された部品を揃え、納期に応じて組み立てを行うチームだ。メンバー5人のスケジュールを確認し適宜指示を出した後は、部品や製品のチェックに移る。製造工程の最終段階ゆえに、ミスを放置したまま先へ送るわけにはいかない。5人で意見を交換しつつ、細部まで丁寧に確認する。
仲間たちが現場に出たら、作業工数の入力やメールチェックを行う。新規発注の連絡が届いていることも多い。納期や他の案件との兼ね合いを考慮して、適材適所で人員を配置しスケジュールを組み立てていく。もちろん機械班との連携も必須だ。
こうした班長業務を終えると現場へ移動し、状況に応じて各人のフォローに入る。周囲とコミュニケーションをとりつつ、多くの作業を円滑に進められるよう全体をコントロールすることこそが、金子に与えられた最大の責務なのである。
他の現場での
経験を生かす
千葉で生まれ育ち地元で働いていた金子が宇野澤組鐵工所に出会ったのは、結婚と長女の誕生を機に転職を考えていた時のことだ。真空ポンプに関心を持って調べてみたところ、さまざまな場面で人々の生活や社会に貢献していることを知って驚き、この仕事にぜひ携わってみたいと思うようになった。中途採用だけに初めは不安もあったが、直属の上司や先輩だけでなく各部署の人々からフランクに声をかけてもらえたので、スムーズに溶け込むことができた。こうした懐の深さも宇野澤組鐵工所の魅力だと金子は考えている。
前職では自動車部品の製造工場で1日数万もの部品を加工していた。その中では忘れられない失敗もあった。油断から数個の不良品を次の工程に流してしまい、それがクレームにつながったのだ。クライアントのもとを訪れ、ミスの経緯を説明するとともに部品の再チェックを行った金子は、確認作業の大切さを改めて思い知ったという。こうした苦い経験も糧となって、仕上班の班長として活躍する今の金子がある。
仲間と同じ目線で未来へ
金子のチームではさまざまな製品の仕上に携わっているが、特に多いのが病院用の小型水封式真空ポンプだ。病院のオペ室や歯科などで、吸引をするために真空を作り出すための装置で、月に40~50台納品することもある。全てが同じ仕様というわけではなく、発注者の要望に合わせ、それぞれ違いが生じる。人の命に関わる製品だけに、常に緊張感と集中力が欠かせない。
正確な作業が求められるのはもちろんだが、班長である金子は、若手の育成も考えて業務に取り組む。今はベテランの班員が支えてくれているが、彼らはやがて定年退職となる。宇野澤組鐵工所が蓄積してきた技能を若手と共有し、継承していかなければならない。
1日の締めは5人全員で現場のチェックと清掃。整理・整頓・清掃・清潔・躾のいわゆる「5S」はあらゆる職場に共通する基本だ。金子はこう語る。
「班長も班員の1人です。チームのみんなと同じ目線で、同じ作業をすることが大切だと思っています」
仕事を終えた金子は保育園へと急ぐ。5歳の双子が父の迎えを待っている。